疾病は早期発見&早期治療が基本。
当院では、未然防止を含めた早期発見のための体制構築に尽力するとともに、皆様の知識が強化されることで早期発見に繋がるのではとの思いから、
主な眼の疾病の概要を掲載させていただいております。
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眼に良い食べ物 |
花粉症(花粉症の原因植物)
人は体内に異物が入った場合、異物(抗原)にたいして抗体を作りだします。抗体は抗原と反応し、抗原を無毒化させる「抗原抗体反応」
により、体を異物から守ります。
この機能を「免疫」と呼びます。抗原抗体反応を担う抗体は5種類の「免疫グロブリン」というタンパク質で、
そのうちの「IgE抗体」が花粉症と深く関わっています。
このIgE抗体が本来ヒトには無害な花粉に対して過剰に反応し、アレルギーを引き起こす
こととなります。
花粉症は花粉を「アレルゲン」(抗原)とするアレルギーです。
毎年、植物の花粉が舞う頃になると症状があらわれます。
眼に起こる花粉症は急性アレルギー性結膜炎で、目がかゆい、目やにが出る、目が赤い等の症状がでます。スギ科・キク科・イネ科等の花粉に
よって引き起こされますが、どの花粉でどの程度の症状が起きるかは人によって異なります。
●花粉症(アレルギー)が発症するまで
体のなかに異物(花粉等)が入ってくる。
異物と認識されると、抗原に対抗するため、抗体(IgE/免疫グロブリンE))が作られる。体内の肥満細胞表面には、IgE受容体があり、
IgEはそこに結合する。
※産生されるIgEの量が、ある一定量を越えるとアレルギー反応を起こすと考えられています。
肥満細胞表面に結合したIgEに抗原が結合すると、細胞が活性化され、細胞の中に含まれている 等の化学伝達物質が放出される。
ヒスタミン等の化学伝達物質により、脳へ情報が伝わると、かゆみ、鼻水、くしゃみ等のアレルギー症状を起こす。
●アレルギー性結膜炎
結膜は瞼の裏、眼の白目の部分です。結膜炎は結膜が炎症を起こし、目のかゆみや腫れ、充血を伴った症状を示します。 アレルギー性結膜炎とは、上記の免疫機能の過剰反応によって引き起こされる結膜炎を差します。
眼瞼結膜の発赤
結膜の充血
※結膜に浮腫が認められる(写真は薬品によりわかりやすくなっている)
●通年性と季節性のアレルギー
通年性:季節を問わず、年間を通じて病状が発現する。抗原はハウスダストやペットの毛などです。
季節性:症状の発現が季節性のもの。花粉症がこれに分類されます。花粉の時期が過ぎれば、自然に治まります。
◎花粉症の原因植物について
雑草本植物
ヨモギ(キク科)
開花期:9~10月頃
北海道を除く全土に分布
花粉量はそれ程多くない
ブタクサ(キク科)
開花期:8~10月頃
帰化植物花粉は早朝に多量に放出
午後にも葉に落ちた花粉の2次的飛散がある
オオブタクサ(キク科)
開花期:8~9月頃
葉の形はブタクサとは全く異なる
花粉の形態はブタクサと類似
放出量はブタクサより多量
※秋(8~10月)の花粉症の原因植物の花粉は広範囲には飛散せず、どちらかといえば局所的なので、野原や土手などの花粉が 飛散している場所は避けておきましょう。
イネ科草木植物
オオアワガエリ(イネ科)
開花期:5~8月頃
北欧原産の帰化植物
牧草として栽培されている
ホソムギ(イネ科)
開花期:5~6月頃
帰化植物
牧草地、空き地等に見られる
全国に広く分布
カモガヤ(イネ科)
開花期:5~6月頃
帰化植物
イネ科花粉症
抗原植物の代表種
本木植物
スギ(スギ科)
開花期:2~4月頃
ハンノキ(カバノキ科)
開花期:2~4月頃
ヒノキ(ヒノキ科)
開花期:2~4月頃
開花期:3~5月頃
シラカンバ(カバノキ科)
開花期:4~5月頃
●当院での治療
アレルギーの症状のもとになるヒスタミンを抑えるため、抗アレルギー点眼薬を処方いたします。季節性のアレルギーの場合は、
症状のでる数週間前から使用すると効果的です。症状が重い場合はステロイド点眼薬を用いる事もあります。
アレルギー性結膜炎の治療では、上記のような投薬のほかに、抗原を寄せ付けないようにする事も重要です。
◎抗アレルギー剤
●メディエーター遊離抑制薬:
肥満細胞に働き、ヒスタミン等の化学伝達物質の遊離を抑制します。 (インタール・アレギザール・リザベン・パタノール)
●ヒスタミンH1-拮抗薬:
ヒスタミンとH1受容体の結合を阻害し、結合によっておこるかゆみ等の作用を抑制する、抗ヒスタミン作用をもっています。
(サジデン・リポスチン・アレジオン)
●ロイコトリエン拮抗薬:
ロイコトリエン(化学伝達物質のひとつ)の遊離を抑制します。
(ゼペリン・アイビナール)
◎ステロイド点眼剤
ステロイドがもつ抗炎症作用により炎症をとる作用があり、症状の強い場合に用いられます。副作用として眼圧の上昇や白内障、
緑内障のおそれがあるので、専門医より慎重に処方されます。
(フルメトロン・リンデロン等)
■アレルギーと寄生虫
寄生虫の感染率の低下とアレルギーの増加に相関関係を見出し、寄生虫感染が減少したことで、アレルギーが増加したのではないか
という説があります。
実際に、日本で寄生虫が減少してきた時期と、花粉症が増えはじめた時期は一致しています。確かに当院でも30年前はアレルギー性結膜炎の
患者様はほとんどいらっしゃいませんでした。
花粉に対して作られる抗体(IgE)と寄生虫に対して作られるIgEは非常によく似ています。上述したように、肥満細胞上にはIgE受容体があり、
IgEは肥満細胞に結合しますが、寄生虫に対して作られるIgEも肥満細胞に結合します。
異なるのは、寄生虫に対して作られるIgEは花粉に対して反応しないという事です。寄生虫に対するIgEが、花粉に対するIgEより先に
肥満細胞に結合してしまうので、花粉アレルギーが発生しにくい、と考えられているようです。しかし、アレルギーは寄生虫感染によって
さらに悪化するという研究結果もあり、未だ仮説の域を脱していません。
人類がアレルギーを克服するには、まだまだ時間がかかりそうです。それまでは、この国民病と折り合いをつけて、付き合っていくことに
なりそうです。
●花粉の最新情報はこちら
・環境省花粉観測システム http://kafun.taiki.go.jp/
・花粉情報 – 日本気象協会 http://www.tenki.jp/pollen/